内部告発者は“報復”から守られるのか? 法改正、国会審議の行方は(2020・4・1 Yahoo!ニュース特集)
製品の無資格検査やデータ改ざんなど日本企業での不正が引きも切らない。働く現場でそんな不正を知ったら、あなたはどうするだろうか。告発したら組織に報復される恐れはないのだろうか――。実は、内部通報者(内部告発者)をどう保護するかの重要な法案「公益通報者保護法」の改正案が今国会で4月から審議されようとしている。ところが、改正案には“報復に対する罰則”の規定がないため、「これでは報復に歯止めはかからない」「声を上げる人など出てこない」という声が根強い。不正や不祥事を見逃さず、社会正義を実現させるための内部通報。その先行きはどうなるのか。
撮影:穐吉洋子
◆内部告発経験者「これでは報復する側を守る法律です」
金沢大学医薬保健学域医学類の准教授・小川和宏さん(57)は内部告発の経験者であり、組織から報復された経験も持つ。その目からすれば、公益通報者保護法の改正案は「あきれました」という内容だという。
「内部通報者に報復した企業や行政機関などへの刑事罰はもちろん、(企業名公表などの)行政措置すらもスッポリ抜け落ちています。改正案は、自民党のプロジェクトチーム(PT)の提言を丸のみした内容ですが、これでは社会的正義のために声を上げる人は出てこない」
怒りのためか、取材に応じる小川さんの声は少し震えている。
「『森友学園問題』で近畿財務局の職員は公文書改ざんという不法行為を押し付けられました。こんな改正案では同じような立場の人は内部通報などできないでしょう」
金沢大学准教授の小川和宏さん(撮影:本間誠也)
研究室の上司に当たる「教授」の不正経理問題について、小川さんが大学本部に通報したのは2006年のこと。教授に不正をやめるよう進言したものの、聞き入れられなかった末の通報だった。ところが、通報を受けた大学側は、その内容や通報者が小川さんであることを当の教授に漏らし、2カ月後には「不正がなかった」という結論を出してしまう。
これを機に教授によるパワハラが本格化し、小川さんは研究室から締め出され、授業の機会も奪われた。大学側はこうした状況を容認し、小川さんは学内で完全に孤立した。
その後、地元紙による報道をきっかけに、大学側は教授による500万円以上もの不正経理を認定。小川さんは大学側などを相手取って損害賠償訴訟を起こし、裁判所は2017年に大学側の非を認め、賠償金約220万円の支払いを命じた。それでも全ては落着していない。
金沢大学(撮影:本間誠也)
小川さんは訴える。
「不正経理を行った教授はすでに退職しましたが、私の授業数は削減されたままの状態です。最初の内部通報から既に14年です。なぜ私がこんな扱いを受けなければならないのか。告発者への報復を禁じてはいるものの、公益通報者保護法に肝心の罰則規定がないからです。『やり得』の構造になっている。刑事罰の導入を願っていましたが、まさか行政措置も見送られるとは……。これでは『通報者保護法』ではなく、報復する側を守る法律です」
撮影:穐吉洋子
◆「役所には内部告発者を守る気概がない」
首相の諮問機関である内閣府消費者委員会専門調査会は2018年末、この法律の改正に当たっての報告書で、通報者に報復した企業などへの「行政措置」(企業名の公表など)を要求している。それなのに、なぜ、改正案に盛り込まれなかったのか。
この法律に詳しい中村雅人弁護士(東京)は言う。
「報告書の要望のうち、改正案の条文から唯一、すっぽりと欠落したものがある。それが報復企業に対する行政措置の導入です。専門調査会の報告書は答申ですから、法律は答申に沿って作られるべきなのに……。(通報者への)不利益取り扱いに関して、(法案は)答申を無視しています。政府は附則に3年後の見直しを記し、付帯決議に『不利益取り扱いの是正に向けた取り組みを進める』などと入れればいいと思っているのでしょう」
中村雅人弁護士(撮影:本間誠也)
取材を進めていくと、その背景として日本経済団体連合会(経団連)をはじめとする経済界の意向に加え、同法を所管する消費者庁のマンパワー不足を指摘する声が複数の関係者から聞こえてきた。政府案ができる前の自民党PTでは「報復した企業に厳しいペナルティーを科さないと実効性のある法律にならない」と主張する議員もいたが、大きな流れにはならなかった。
中村弁護士は「消費者庁は本当に情けないし、気概がない」と前置きし、こう指摘する。
「消費者庁の幹部は、消費者団体や弁護士の集まりに来て、どう言ったと思います? 『自分たちには通報者に不利益取り扱いをした企業に対して行政処分できるだけの能力はない。スタッフもいない』と。『公益通報の対象となる法律は何百もあるし、不利益処分(報復)が通報したことを理由にしているかどうか、自分たちには事実認定する力がない』なんて言っているんですよ」
撮影:穐吉洋子
マンパワー不足という“言い訳”に対し、中村弁護士はこう言う。
「そんなのは消費者庁が司令塔の役目を果たして、他省庁の協力を仰げばいいだけの話です。特に労働紛争では、厚生労働省が全国に労働局を持っていて紛争処理をいっぱいやっているわけですよ。『そうしたものを活用すればいい』と言うと、消費者庁の幹部は『厚労省が協力してくれない』とこぼす。厚労省に向かって『バシッと司令塔機能を発揮して、やってくれ』となぜ言えないのか。国会審議の中心は報復企業に行政措置を導入するか、否かになるでしょう」
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この記事は「内部告発者は“報復”から守られるのか? 法改正、国会審議の行方は」の冒頭部分です。2020年4月1日、Yahoo!ニュースオリジナル特集で公開されました。取材は、フロントラインプレスの本間誠也さん。内部告発者やその制度、仕組みの問題点について取材を続けています。
記事はこのあと、「スルガ銀行不正 行員は報復を恐れて内部通報しなかった」「通報の漏洩には罰則『あのとき、その条文があれば』」「EUの条文は具体的で実効性がある」などと続きます。
記事の全文はYahoo!ニュースオリジナル特集で公開されています。下のリンクからアクセスしてください。Yahoo!へのログインが必要になることもあります。
内部告発者は“報復”から守られるのか? 法改正、国会審議の行方は





